木村裕介 (東工大)

非擬似古典確率項を持つシミュレーテッド量子アニーリングの収束条件

横磁場の作用したイジング模型で、パウリ行列のx成分の2次の項(+XX項)を含む模型を考察した。+XX項の係数および横磁場項の係数がいずれも正の場合を考察した。+XX項に対応する効果は横断方向の反強磁性相互作用と呼ばれる。解析を行うにあたり、この模型にシミュレーテッド量子アニーリング(量子モンテカルロ)を適用した。一般に+XX項があると負符号問題が生じることが知られる。従来、負符号問題のためにシミュレーテッド量子アニーリングによる+XX項を含む横磁場イジング模型の解析は不可能と考えられてきた。しかしながら、今回の研究でハミルトニアンのパラメータを適当に選び制限を課すことで上記モデルの局所ボルツマン因子が非負に出来ることを示した。ここで、横磁場の作用と横断方向の反強磁性相互作用(+XX項の作用)の両方を考えることが重要である。この結果は、上記で記述した手法で負符号問題を回避できる可能性を示唆する。この結果により、上記モデルが一定の有限温度の下で熱平衡状態へ収束する条件を導出した。実際の応用上は温度が低い場合を主に考える。これに加え、トロッター数が大きい場合には基底状態への収束との比較が可能となる。