深見俊輔(東北大)

スピントロニクス確率ビットを用いた疑似量子計算

熱揺らぎによって確率的に0,1を出力するスピントロニクス確率ビット(Pビット)を用いた疑似量子計算について、その原理を説明し、原理実証用の小規模回路やFPGAと組み合わせた回路での動作実証の結果を紹介する。量子アニーリングで用いられる組合せ最適化問題のアルゴリズムを用いた因数分解 [1]や、RC回路を用いてPビット間の結合を更新するボルツマン機械学習 [2]の原理実証実験などを述べる。当手法は、熱ゆらぎを利用することから、低消費電力かつ室温での動作が可能であり、またギガビット級の製造技術が確立している不揮発性メモリと同じ材料・プロセスで小面積で形成できるなどの利点を有する。
[1] W. A. Borders et al., Nature 573, 390 (2019).
[2] J. Kaiser et al., Phys. Rev. Appl. 17, 014016 (2022).